妊娠中に気をつけたい感染症シリーズ⑨:水痘・帯状疱疹ウィルス 院長コラム#037

2024.10.06 院長コラム

院長の吉冨です。今回は妊娠中に気をつけたい感染症シリーズ第9回目、水痘・帯状疱疹ウィルスについてです。水ぼうそうと同じウィルスで、水ぼうそうと言った方がなじみがあるかもしれません。

 

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水痘・帯状疱疹ウィルスとは

 水痘・帯状疱疹ウィルスに初めて感染すると、水痘、、、いわゆる水ぼうそうとして発症します。多くの場合は子どもの頃に罹り、かゆみを伴った発疹と発熱が主な症状で、だいたい1週間ほどで一旦治まります。しかし、その後もウィルスは神経の中に潜み続け、免疫力が低下すると再活性化し、帯状疱疹として繰り返し発症します。日本では15歳以上の概ね9割以上は、水痘・帯状疱疹ウィルスに対する抗体を持っているとされています。感染経路としては飛沫感染や空気感染、接触感染があります。このウィルスを完治させる薬はなく、抗ウィルス薬は症状を緩和し、症状の持続期間を少し短縮させるために使用します。

 

妊娠中の初感染(水痘発症)について

 妊娠中に初めてこのウィルスに感染すると、妊婦さん本人が重症化しやすく、肺炎を併発すると死亡率が高くなると言われており、抗ウィルス薬の投与を検討する必要があります。また、妊娠初期・中期に初めてこのウィルスに感染すると赤ちゃんに先天性水痘症候群を12%程度の確率で発症すると言われています。先天性水痘症候群は赤ちゃんに手足の低形成や眼の症状、水頭症などの神経障害を来す総称です。

 妊娠末期、とりわけ分娩前21日~分娩前6日での初感染では赤ちゃんに妊婦さんからの抗体が移行するため赤ちゃんが水痘を発症しても軽症で済みますが、分娩5日前から産後2日の間に妊婦さんが水痘を発症した場合は3040%程の割合で赤ちゃんが水痘を発症し、抗体もないため重症化し、死亡率は30%にも達します。

 

妊娠中の帯状疱疹について

 妊娠中に帯状疱疹を発症することがありますが、帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウィルスの再活性化によって起こる症状であり初感染ではないため、先天性水痘症候群は発生しないと考えられており、発生したという報告は今のところありません。

 

産後の帯状疱疹について

 赤ちゃんは生後6ヶ月程度までは母親由来の抗体を受け継いでいるため、それほど神経質になる必要はありませんが、お母さんの帯状疱疹の症状が出ている部位に誤って接触したり、患部を触った手で赤ちゃんを触ったりすると、水ぼうそうを発症する可能性はありますので注意は必要です。

 また、母親以外のご家族に水痘や帯状疱疹を発症した方がいらっしゃる場合も同様に注意が必要です。特に母親に抗体がない場合は赤ちゃんにも抗体がない状態ですのでより一層の注意を必要とします。

 

予防が大切

 妊娠中は水痘ワクチン接種ができないため、妊娠前に抗体検査で抗体の有無を確認し、抗体がない場合はワクチン接種をしておくことが大切です。ワクチン接種後は2ヶ月間の避妊が必要ですが、妊娠判明前3ヶ月から妊娠初期に偶発的にワクチンを接種してしまっても先天性水痘症候群の発症は今までに報告されていないため過度の心配は不要です。また、授乳中のワクチン接種は可能です。

 

以上、簡単に産婦人科医からの視点で水痘・帯状疱疹ウィルスについて解説してみました。

水痘・帯状疱疹ウィルスに関して、ご心配やご質問などがある場合はかかりつけの医師にお尋ねください。