妊娠中に気をつけたい感染症シリーズ④:サイトメガロウィルス 院長コラム#024
2022.09.19 院長コラム
院長の吉冨です。今回は妊娠中に気をつけたい感染症シリーズ第4回目、サイトメガロウィルスについてです。
今回もあまり聞き慣れない感染症かと思いますが、妊婦さんは注意が必要な感染症です。
サイトメガロウィルスとは
サイトメガロウィルスという感染症を聞いたことがない方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
サイトメガロウィルスは大人になるまでに70%以上の人が感染していると言われています。
通常の免疫力のある人が感染した場合、無症状であることが多く、感染したことにほとんど気づきません。
感染経路としては輸血や体液(尿や唾液など)との接触、性行為などがあります
妊娠中にサイトメガロウィルスに感染したらどうなるの?
妊娠中に初めてサイトメガロウィルスに感染してしまうと、赤ちゃんに先天性サイトメガロウィルス症を発症する危険性があります。
先天性サイトメガロウィルス症の症状は重症なものから軽症のものまで多彩で、主には赤ちゃんが小さく産まれてきてしまったり、小頭症や水頭症などの中枢神経障害を来したり、肝臓や脾臓が腫れたり、出血しやすい状態になったり、耳が聞こえなかったり、目が見えなくなったりすることがあります。
妊娠中に初めて感染すると赤ちゃんに何らかの症状が出る可能性は30%程と言われていますが、妊娠中の再感染や再活性化でも1%程度何らかの症状が赤ちゃんに出ることがあると言われています。
妊娠中のサイトメガロウィルス検査について
全妊婦さんに対するサイトメガロウィルス抗体スクリーニング検査は推奨されていません。
それは先天性サイトメガロウィルス症の発症予測や赤ちゃんへの感染予防・治療が確立されておらず、感染予防のためのワクチンもまだ実用化されていないからです。
しかし、抗体陰性者に対する感染予防の啓蒙や先天性サイトメガロウィルス症の赤ちゃんへの早期治療介入によって重症化を抑制できる可能性があるため、施設によっては抗体スクリーニング検査を実施していることがあります。
当院では全妊婦さんへの抗体スクリーニング検査は行っておりません。
感染予防について
治療法が確立されていないため、妊娠中は初感染はもちろんのこと、できれば再感染も起こさないように注意することが大切です。
具体的には以下のようなことに注意をすると良いかと思います。
・子どもの体液(よだれや鼻水など)や排泄物(おしっこやうんち)に触れたときは頻回に石けんで手を洗いましょう。
・子どものおもちゃなど、よだれや鼻水のつくものや場所に注意し、清潔に保ちましょう。
・子どもと食べ物や飲み物、食器を共有しないようにしましょう。
・性行為を行うときは最初からコンドームを着用しましょう。
・適度に休息をとって、免疫が落ちないようにしましょう。
以上、簡単に産婦人科医からの視点でサイトメガロウィルスについて解説してみました。
サイトメガロウィルスに関して、ご心配やご質問などがある場合は医師にお尋ねください。