産科(妊娠・出産・育児)の視点から見る喫煙について 院長コラム#019
2022.04.18 院長コラム
院長の吉冨です。今回は産科医の視点から喫煙について書いてみようと思います。
タバコには数千種類の有害な成分が含まれており、タバコを吸うたびに妊婦本人の身体とおなかの中の赤ちゃんに様々な害を及ぼします。
おなかの中の赤ちゃんが小さくなることや早産の確率が高まることはよく知られていることですが、胎盤が子宮の出口を塞ぎ妊娠中や帝王切開時に大量出血を引き起こす前置胎盤となる確率が高くなったり、おなかの中で赤ちゃんが生まれる前に胎盤が剥がれてしまい赤ちゃんが亡くなったり妊婦さんが重篤な状態となってしまう常位胎盤早期剥離といった最も重症な産科合併症が増えることも知られています。
さらに妊娠中にタバコを吸い続けることによって、赤ちゃんの将来にも重大な悪影響があることも知られています。
その一つに乳幼児突然死症候群という突然何の前触れもなく赤ちゃんが寝ている間に亡くなってしまう病気があります。
これは妊婦さんやその家族がタバコを吸っていることが関係していることがわかっており、妊婦さんや家族が禁煙をする事で発症頻度を減らすことができるといわれています。
また、注意欠陥多動性障害という落着きがなくなる病気や、生活習慣病が起こりやすくなることも指摘されています。
おなかの中で育っている赤ちゃんは、身体の基礎を構成されている時期であり、将来にとって重要な時期となります。
そのようなときに妊婦本人や家族がタバコを吸うことは百害あって一利無しなのです。
妊婦本人はもちろんのこと、家族も禁煙することはおなかの赤ちゃんの将来にとって大きな意味があります。
ですのでタバコは絶対にやめましょう。
また、生まれてきてからもタバコの煙を吸いながら成長する子どもと、タバコのない環境で成長する子どもとでは、発達や病気の罹りやすさに差が出ますので、一度やめたタバコは二度と手を出さないようにする事も大切です。
禁煙は吸う本数をちょっとずつ減らす方法では成功しません。
きっぱりと今すぐ禁煙をし、完全にやめてしまうことが重要です。
そしてタバコやそれに関連したもの、例えば灰皿やライターなども一緒に捨ててしまいましょう。
赤ちゃんのためにそして本人・家族のためにも妊娠した今が禁煙の絶好のチャンスです。