出産にかかる費用について 院長コラム#012
2021.09.20 院長コラム
院長の吉冨です。
開院当初より出産費用=分娩費用のお問い合わせをいただき、最近お問い合わせ件数も増えてきましたため、今回は分娩費用の考え方についてご説明しようと思います。
なぜ分娩費用を詳しく提示できないのか
「分娩費用は合計でいくらくらいになりますか?」、「無痛分娩を行った場合、合計でいくらくらいかかりますか?」など、分娩前に分娩費用のお問い合わせをいただくことが少なからずあります。
私どもとしましても、「***円になります!」とはっきり明瞭にしたいところではあるのですが、それは不可能です。
どうしてかと言いますと、分娩は何が起こるかわからず、どのような処置を要するのか予想がつかないからです。
具体的な例をいくつか挙げてみます。
例① 妊娠経過に問題がなく、赤ちゃんの問題も指摘されていないごく普通の妊婦さん。予定日に陣痛が始まって入院となり、分娩がゆっくり進行したが、赤ちゃんの心音が急に低下し、緊急帝王切開となって出産。赤ちゃんは元気ではあるが呼吸が落ち着かないため、NICUへ新生児搬送となった。
→この場合、まず経腟分娩となっていないため、通常のお産費用とは全く異なってしまいますし、入院日数も経腟分娩より長くなってしまいます。また、赤ちゃんのお預かりがなく、赤ちゃんにかかる費用も発生しなくなってしまいます。これは無痛分娩の事例でも同様のことが言えます。
例② 妊婦さんが陣痛に疲れてしまって、最終的にいきめなくなってしまったため、吸引分娩で出産となり、子宮の出口部分が切れてしまっていたり、深い会陰裂傷があった場合。
→この場合は経腟分娩となっていますが、吸引分娩を必要とするような分娩の異常を来していますし、切れてしまった傷を修復する処置が必要となってくるため、なんの医療行為も行われなかった自然分娩とは違い、追加の費用が発生してしまいます。
例③ 妊娠経過や分娩経過に全く異常がなく、自然分娩となったが、産後3日目に赤ちゃんの黄疸(おうだん)が基準値を超えてきたため、赤ちゃんに光線療法を行った。
→この場合、分娩やお母さんの診療行為そのものには追加の料金が発生はしません。しかし、赤ちゃんを入院させ、光線療法を行うことに対しては追加の料金が発生します。
自費なの?保険なの?
医療には自費診療と保険診療があります。トラブルのない自然のお産に関しては基本的にほぼ全てが自費診療となります。分娩時の異常や産後の異常に関しては一部が保険診療となります。
自費診療はそれぞれのクリニックや病院で料金の設定がなされますが、保険診療は全国共通で診療内容に応じて保険点数から算出されます。
保険診療は吸引分娩や帝王切開などの異常分娩に対する分娩の処置や分娩後の産道裂傷の縫合処置、分娩後の異常経過などがあった場合に必要に応じて行った対応などによって認められるものとなります。
また、お母さんの保険診療分は3割負担となりますが、赤ちゃんの保険診療に関しては出生直後はまだ保険証がないため、お支払いは10割負担となり、後日、乳幼児医療証が発行されましたら、医療費の助成制度にしたがって、該当分の返金を受ける形となります。
出産一時金
ご出産された場合、ご加入の社会保険より42万円の出産一時金が受けられます。
直接支払制度をご利用になられた場合は分娩・入院料金から42万円を差し引いた額がお支払いいただく料金となります。
以上、様々な要因で分娩費用は決められています。
分娩する前に詳細な費用を算出することは困難ですが、当院ではHP等でできるだけ提示するようにはしております。
分娩費用については大事な部分だとは思いますが、お母さんも赤ちゃんも今後の未来を左右する可能性が妊娠時やお産時には起こりえますので、病院に通っているという自覚を持って、本懐である医療をまず評価することが大事なのかなと個人的に考えております。