妊娠初期 その2 ~妊娠初期の知って得するトリビア~ 院長コラム#009
2021.06.20 院長コラム
院長の吉冨です。今回も前回に引き続き、妊娠初期の知って得するトリビアについて簡単にご説明しようと思います。
妊娠を考えている、妊娠したかもしれない、妊娠がわかったなど、妊娠を意識したときに役立つ、生活習慣について簡単にご紹介します。
1. たばこ
喫煙することによって、全身の血管が収縮し、赤ちゃんに酸素や栄養が行き渡らなくなってしまいます。その結果、切迫流産や流産、切迫早産や早産を引き起こしやすくなるばかりでなく、赤ちゃんの体重が増えずに小さい状態で生まれてくる(低出生体重児)こともあります。
また、常位胎盤早期剥離という、赤ちゃんにとってもお母さんにとっても命に関わる病気のリスクが上がります。
さらに、子供が将来ADHD(注意欠陥多動性障害)を発症する可能性が高くなるとも言われており、まさにたばこは百害あって一利ありません。この機会に妊婦さんはもちろんのこと、旦那さんや周りのご家族もきっぱり禁煙することをお勧めします。
2. お酒
以前は大量に飲酒をすると胎児性アルコール症候群という病気を赤ちゃんが発症するという認識しかありませんでしたが、最近では飲酒量がそれほど多くなくても赤ちゃんに影響があることがわかってきています。アルコールは主に赤ちゃんの成長や発達に影響を及ぼすとされています。妊娠中はお酒を飲まないようにしましょう。
3. お薬
妊娠中に使ってはいけないお薬は実はそんなに多くありません。過度に怖がる必要はありませんが、お薬を使う際にはお薬を処方してくれた医師、もしくはおかかりの産婦人科医へご相談ください。
妊娠前から飲んでいるお薬がある方も自己判断で中止せず、かかりつけ医にご相談ください。
また、お薬の強さが必ずしも赤ちゃんへの影響の強さではありません。市販薬くらいなら大丈夫だろうと、飲み薬や湿布、塗り薬などを自己判断で使用しないでください。
お電話でのお問い合わせは診療を妨げることになりますので、受診の上、相談されるとマナーとしてはとても好印象です。
4. サプリメント
サプリメントは薬ではなく補助食品です。日頃の食事などでは摂取不十分な栄養素を補う役割だと考えてください。
葉酸をはじめ、お母さんや赤ちゃんにメリットがあるものがあります。
反面、過剰摂取でお母さんや赤ちゃんに問題が起こることもあります。
正しい知識をもってサプリメントを使用することはとても有意義なことですが、なんとなく使用するのは好ましくありません。サプリメントについては次回詳しく解説しようと思います。
5. カフェイン
カフェインの過剰摂取は流産や早産、低出生体重児、発達障害のリスクを高めると言われていますが、一日300mgまでのカフェインでは妊娠への影響はないと言われています。
カフェインは気分をリラックスさせる効果があるので、一日1~3杯のコーヒーは気分転換に良いと言われています。
6. 食べもの
よく妊娠中に食べたほうが良い食べ物は何ですかと聞かれますが、特別にこれだけは食べておいたほうが良いという食べ物はありません。きちんとバランスよく食事をすることが大切です。
食べ物で注意が必要なのは、過剰摂取をしてはいけない食べ物やできるだけ食べない方が良いものがあることを知っておくことです。
今回全て書くことはできないので代表的なものだけを紹介します。
まず、控えたほうが良い食べ物は生肉や生ハム、生レバーです。これらにはトキソプラズマという原虫がいることがあり、妊婦が感染すると赤ちゃんに影響が及ぶことがあります。ですので、肉には火を通してください。また、生野菜にもトキソプラズマが付着していることがあります。火を通すか良く洗って食べてください。
それから、魚卵の加工品(明太子、いくら、数の子など)やナチュラルチーズも避けたほうが良いです。リステリア菌という流産や死産を引き起こす菌が繁殖していることがあります。
その他、過剰摂取を避けたほうが良い食べ物の代表としてはマグロや赤身の魚、サメなどの大型の魚、一見よさそうではありますがひじきやレバー、ウナギも過剰摂取に注意が必要です。
7. 服装
季節にもよりますが、動きやすくてお腹を締めすぎないような服装が良いと思います。
お腹がかなり大きくなってもハイヒールを履いている妊婦さんやかなりタイトなジーンズをはいている妊婦さんを結構見かけます。特に靴は滑ったり転んだりしてお腹をぶつけると大変ですのでスニーカーなどの歩きやすい安定した靴をお勧めします。
8. 運動
妊娠中の運動はお腹の赤ちゃんに悪影響があるのではと心配する方もいますが、適度な運動を定期的に行って身体を鍛えることは、妊娠中のトラブルを軽減し、お産をスムーズにさせる効果があると言われています。全速力で走ったり、激しい球技を行ったりすることは、お腹や身体に負荷がかかりすぎるため避けてください。
妊娠中に良いとされている運動の特徴は①有酸素運動、②全身運動、③母児にとって安全で楽しむことのできる運動とされています。
代表的なものに水泳やアクアビクス、ヨガなどがあります。運動をされる場合は医師の許可を得ておくと安心です。出血があったり、お腹の張りが頻回にある方は避けてください。
お腹が大きくなって動きにくくなった方は軽めにストレッチをするだけでも良いと思います。体調が悪くなったときや妊娠経過に異常がある場合は運動を休むことも大切です。
9. 夫婦生活
妊娠中の性行為がどれだけ妊娠に悪影響を及ぼすのかははっきりとはわかっていません。
性行為を行うことで様々な理由から子宮収縮が促されることは以前から指摘されていますが、妊娠経過に問題が無い場合、性行為を行うことはそれほど問題が無いと最近では考えられています。
ただし、性行為を行うときには、子宮内にばい菌の感染が起こらないよう清潔を保った状態で必ずコンドームを着用するようにしてください。
また、出血がある時やお腹の張りが頻回にある場合は性行為は控え、それ以外の方法で夫婦間のスキンシップを取るようにしましょう。
10. 仕事
妊娠中に仕事をするにあたって、いつまで仕事をしてよくて、いつから仕事をしてはいけないという決まりはありません。
妊娠経過が良ければ最長で生まれる直前まで仕事を続けることも可能です。
しかし、妊娠中のトラブルによって仕事を軽減させたり、お休みしたりしなければならないこともあります。
状況に応じて母性健康管理指導事項連絡カードをお渡しします。これにより勤務の軽減や休業の必要性を会社に伝えることができます。
注意事項としては、会社に休んでいいと言われた場合、あるいは自己判断で休業した場合などに診断書や傷病手当を後から作成してほしいと言ってくることがよくありますが、これはお受けできません。なぜなら、その判断は医師がしたわけではなく、会社や自己の責任のもとで行われた休業であるからです。このことはよくトラブルにつながりますのでくれぐれも気を付けていただきたいと思います。