妊娠初期 その1 ~妊娠初期の必要な知識~ 院長コラム#008

2021.05.20 院長コラム

院長の吉冨です。今回は前回から引き続き、妊娠初期の必要な知識を簡単にご説明しようと思います。

 

予定日が決まるまでの流れ

 順調であれば子宮内妊娠(子宮の中に赤ちゃんの袋が見える)が確認された後は2週間前後に赤ちゃんの心拍を確認します。
赤ちゃんの心拍が確認できたらさらに2週間前後で分娩予定日を確定させます。
早く受診しすぎたり、受診するのが遅すぎたりした場合は心拍が確認できなかったり、予定日を通常の方法で確定させることができなくなることもあります。
予定日の決定は今後の妊娠経過にも大きく影響しますので、必ず医師の指示に従ってください。

 

予定日が決まった後にすること

 予定日が決まったら、次は母子手帳を交付してもらい、いよいよ妊婦健診が始まります。
産婦人科で母子手帳を申請するための書類をもらったら、次の受診日までに母子手帳を役所で交付してもらい、毎回の受診時に持参してください。

 

妊娠の公表時期

 いろんな事情があると思いますので一つの参考として考えてください。
夫やパートナーには今後のことも含めて話し合う必要がありますし、相手も知る必要がありますのでいち早く伝えるのが良いと思います。
ご両親、ご家族にはいち早く伝えても良いと思いますが、初期流産の可能性はそれなりの頻度でありますので、それを考慮して少し遅めの母子手帳をもらうくらいの時期(妊娠812週)が良いと思います。
会社や友人などに伝えるのは比較的流産の可能性が少なくなってくる妊娠12週以降が良いと思います。
当然、つわりの状況や腹痛、出血の具合などにより早めに伝えたり、遅めに伝えたり、調整は必要となってきます。

 

妊娠初期によくあるトラブル

①出血:妊娠22週未満で出血があった場合、お腹の痛みなど関係なく、全て切迫流産と診断されます。
切迫流産と聞くと恐ろしく感じるかもしれませんが、実際は本当に流産するものから全く問題ないものまであります。
近いうちに流産・切迫流産については改めて詳しく解説をしようと思いますが、ここではざっくりと解説しますと、
・妊娠初期の流産の原因は赤ちゃん自身にあることが多く、妊娠した時点で流産となることが運命づけられていることが多いということ
・それゆえ、有効な治療方法はなく、とりわけ妊娠16週未満で少量の出血(月経時よりも少ない)なら、あわてなくても良いですので、気になるようでしたら診療時間内の外来でご相談ください。

②お腹の痛みや張り:多くの場合は赤ちゃんが育って子宮が大きくなることで靭帯がのばされたり、一時的に子宮が収縮することで起こります。
この痛みや張りによって流産を引き起こすことはありませんが、流産の結果として痛みや張りを感じることがあります。
また、虫垂炎や卵巣腫瘍、尿管結石などの妊娠とは関係のない病気でも痛みを感じます。
多少の痛みや張りだけならば基本的には様子を見るだけで良いことが多いですが、症状が強い場合はご相談ください。

③つわり(悪阻):多くの妊婦さんに現れる症状ですが、まったくつわりがなくても妊娠経過に問題があるわけではありません。
症状には個人差がありますが、点滴や入院が必要な妊婦さんはそれほど多くはありません。
症状が強く、まったく飲食できないような場合は点滴や入院が必要です。
根本的な治療法はなく、対症療法しかありません。多くの場合、妊娠12-16週くらいには落ち着いてきます。
妊娠16週を超えても全くおさまらない場合はつわりでなく、別の消化器系の病気が隠れていることがありますのでご相談ください。

 

安定期

 安定期という言葉が独り歩きし、あたかも何をしても問題ない時期と誤解を受けやすいのですが、実はそうではありません。
安定期とは赤ちゃんの体が出来上がり、お母さんの体に負担の少ない時期、つまり妊娠中期(16週~28週)を指すことが多いです。
妊娠中はいつでもトラブルを起こしうるので、皆さんが考えているような安定期というのは実は存在しないのです。
例えば、この時期に何らかの理由でお産になれば赤ちゃんは流産となるか、かなり未熟な状態で生まれてきます。
安定期だからと遠出をしたり、体に負担の強くかかることは避けるべきです。
マタ旅(マタニティ旅行)がそのもっとも典型例です。妊娠期間中はどの時期も油断は禁物です。

 

出生前診断

 出生前診断については以前、触れましたので今回は簡単におさらいです。
出生前診断には様々な種類の検査があります。お腹の中にいる赤ちゃんの状態を知るうえで重要な検査ではありますが、検査の意義をよく理解して受ける必要があります。また、検査を受ける時期についても注意が必要です。
受ける検査の内容や意味合いによっては時期の制限があり、出生前診断はある意味で時間との折り合いがとても重要になってきます。
出生前診断に対する知識がなかったことにより、検査を受ける機会が損なわれないように注意が必要です。

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